愛しのレスポール。
子どもの頃の趣味にハマり出したら老人街道まっしぐらとわかっていても、もう既に何かに挑戦する気持ちも努力する気持ちもない自分は、子どもの頃に夢中になったものが楽しくて仕方がない。時計然り車然りバイク然り、そしてギターも。職人が手作りで作った物ってのはいいんだよなぁ、、、。
憧れのギブソンレスポールを手に入れる
ギターの二台巨頭はフェンダーとギブソンで間違いないと思うが、なぜフェンダーではなくギブソンかと言うと、単純に自分が憧れたミュージシャンやバンドにギブソンを愛用する人が多かったからだ。
フェンダーを使うギタリストでパッと思いつくのはイングヴェイ位。
多分フェンダーだったはず。後はシングルではなくハムバッキングの分厚いサウンドが好きなのでギブソンに寄りがち。
好きな音楽がメタルだったこともあるかも。
そんな訳でギブソンに対して憧れがある。
20代の頃にギブソンのフライングVを買ったもののレスポールには当時興味がなく、そこから何年も経て今、ようやくレスポールの魅力がわかるようになった。
フライングVは座って弾くには不向きなギターで、ハイパー内股になって抑え込まないと弾きづらい。その内股で弾く姿勢が弾きづらいのだが。
今は自宅にソファもあるのでソファに腰かけてギターを楽しむには、内股になって弾くよりもゆったりと弾きたい。
そんな時に自分が選んだのは、やはり昔から好きだったギブソンのレスポールである。
エレキギターなのでアンプを通せば音自体はピックアップとアンプでほとんど決まる。
だがしかし、ここでギブソンっぽいギターを買っても満足できず後になってギブソンを買い足すことは目に見えている。
そこからカスタムショップ製の沼にはまり抜け出せなくなった。
ただ高いだけで自分には違いが分からないだろうと思っていたカスタムショップ製。
全然違う。
個体差もあるだろうがボディ全体に伝わる弦の振動。ギブソンUSAを6弦すべてかき鳴らした時とカスタムショップレスポールの3弦のみをポーンとはじいた時ではカスタムショップ製の弦一本の方が体や手に伝わって来る弦の振動が大きい。
音は振動なのでこれを全身で直で感じられる。
この衝撃は相当なもので、今までブラウン管のテレビでみていたAVを映画館の3D眼鏡で見たほどの衝撃だった。
こんなにも違うのかぁ!!と。
そんな訳で自宅に憧れのカスタムショップレスポールが届いた。
厳重に梱包されて届いたギター。過去一モノモノしい雰囲気の張り紙。
いくつもの衝撃吸収材を取り外し3DのAVを開封する。
カスタムショップ製のビンテージ風ケース。
満足感はあるがケースがギブソンUSAよりも薄く、少々小ぶりで中もタイトなので出し入れに気を遣う。ヘッド周辺なんか特に左右のクリアランスがギリギリで気を付けて入れないとペグがケースにあたり、毎回チューニングが狂う。
ケースは廉価版のギブソンUSAハードケースの方が好きだ。
今回購入したのは'56レスポールのゴールドトップ。
前回購入した物とほとんど同じと思うだろうがこれまた違うんだな!一番違うのはブリッジ周辺だ。現代のレスポールの原型を作ったモデルがこの年代のレスポールなんだ。多分。
ヘッドひとつとってもギブソンUSA製とは作りが違う。
当時の手間がかかるが脆い作りになっている。
ビンテージ風の仕上げになっているため始めから全体的に使い古したような線傷や錆アリ。新品なのに。
ボロマニアではない自分はこの流れは好きではないが、これしかないから仕方がない。
当時の製法、上質な材、ハンドメイド、そしてそれを今持ち続けていたらこうなってるはず、、、みたいなのが流行っているように見える。
これ新品で購入した状態のテールピースね。錆びてる。
後で錆を取る。
手間とコストをかけて新品をわざと錆させて雰囲気を出しているのに、届いたオーナーが手間とコストをかけてキレイに錆を除去する作業をするという。
私はキレイな方が好きなんだ。
現代のレスポールはほとんどがこの形だ。
この形を採用した初めてのレスポールが1956年で当時はゴールドトップしかなかった。
それをギブソンが特別ラインで自ら再現したモデルだ。
手に入れられる限りの当時と同じ木材部品、生産効率は悪いが最高のギターを目指して取り入れられた製法で仕上げられたカスタムショップモデル。
錆は不要。
ちなみに54年のレスポールはこのようになっていて今と違う。
54年は構造的にチューニングの狂いやすさなどが欠点だそうだが、ダイナミックなサウンドを轟かす。クリーントーンがキレイ。そして音が柔らかい。カドの取れたまろやかなサウンドを響かす。
対して56年は格段にチューニング制度も上がり安定性が向上。
弦のテンションが緩くなってソロなど弾きやすくなりビブラートもかけやすい。
サウンドのアタック感も強くなり輪郭のハッキリした音が特徴。
が、アルペジオを生音で弾いた時の広がりとフルアコのような美しさは54年に軍配があがる。
車に例えれば、前型は粗いながらもアグレッシブな走りが魅力。最新式は電子制御も入り、より整った走りをするようになった。
そんな同じモデルチェンジ前後の車を手に入れた感じ。
ポルシェで言う997と991のような感じで、どっちが好きかで変わってくるが基本はどっちもそれぞれいい、みたいな両者。
カスタムショップのしるし。AMGのネームプレートみたいで気分は最高。
夕日に輝く黄金のボディと始めから付いてるボロ感を出すための線傷。
カラーはダブルゴールドと名付けられているだけあってスタンダードなUSA製よりも奥行きのある濃い贅沢な金色。これが夕日を反射するとまたキレイなんだ。
マスキングテープをはがした時に微妙にずれて色を塗り過ぎたところもあり、ハンドメイドの醍醐味を味わえる。
好きな人しかわからないマニアの世界の話だが、やはり職人が手間をかけて作ったものは演奏する事で想いが伝わって来る。
素晴らしいサウンドと作りだ。
音を出さずギターを持っただけでもカスタムショップ製とわかる。
目をつぶって弾いてもどちらのギターかわかる。
憧れのギターを手に入れたので長く大切にしていきたい。