車の王様に異論なし。
ロールスロイスは親会社がBMWになって以来、グリル内が光るようになったりとやや俗っぽくなってきた感じがして、特に新型に関しては事前情報ではあまり良い印象を持っていなかった。
しかし実際見て乗ってわかったのは、この車が高いのは『ネームバリュー』だけではないという事。最高の車とは何か、という質問に対して代表選手のように語られるロールスロイス。その神髄を身をもって知る事が出来た。
エンジン始動時の音は小さい音のランボルギーニ
先日、以前から好きだったベントレーについに試乗することが出来た。
良ければそのまま購入してしまおうくらいの前のめりな気持ちで行ったのだが、実際は肩透かしを食らったような気持ちになってしまい足元がふらふらになった。
アウディやポルシェと様々な部品を共有するベントレーでこうなのだから、ロールスロイスは失礼ながら親会社がBMWでは、、、なんてちょっと諦めていたのだがそれでも気になる、大好きなブランドの1つには違いないのでお店に寄ってきた。
ショールームに入って親切極まりない接客を受ける。
アンケート用紙をショールームの入り口で立ったまま書かされたベントレーとは大違いだ。
車についての話も担当さんより伺った。
自分が気になっていた在庫車はつい先日売れてしまったのだという。
ロールスロイスも電気自動車化の流れを加速させているので、今後なくなっていく大排気量V12エンジンの需要が高まり、世界中で取り合いが起こっているのだそうだ。
3000万円~6000万円近い車の取り合いが起こり、飛ぶように売れる、、、なんともすごい世界だが、それだけ多気筒エンジンにはファンが多い。
しばらく話をして新型ゴーストに乗せてもらえることになったので、試乗車の新型ゴーストが置いてある駐車場まで一緒に行った。
駐車場にはお店の試乗車のフェラーリとロールスロイスがずらりと並んでおり、ショールームよりも迫力があった。
外からゴーストのエンジン始動を見ていたのだが、エンジン始動時の音は
『キュイーーーー、ガオン!!』
という音量こそ抑えられているものの、ランボルギーニのエンジンを思わせる迫力のサウンド。6700ccV12エンジンの存在感を感じる。
最初は営業さんに運転してもらい、後席に乗る。
コーチドアを開いて中に乗り込み、ドアのクローズボタンを押す。タクシーのように静かにドアが閉まる。
その瞬間、防音室にでも入ったかのように一気に外界の音と遮断される。
セダンだがボディサイズが大きいので、後席はQ8と同じくらい足元が広い。
BLACK BADGE GHOST
乗車定員 4-5名
ホイールベース 3,295 mm
エンジンタイプ 60°V型12気筒 / 48バルブ
最高出力
450 kW(600 PS) @ 5,250 rpm
最大トルク
900Nm @ 1,700-4,000 rpm
駆動形式
4輪駆動
全長/全幅/全高
5,545 mm / 2,000mm / 1,570 mm
最高速度 250 km/h
タイヤ
前:255/45 R20 105Y
後:285/40 R20 108Y
排気量 6,748 cc
ミッション形式 電子制御8速AT
車両重量 2,490 kg / 2,510 kg
0-100km/h 4.7秒
車両本体価格 (消費税込み) ¥ 43,490,000
今回試乗させてもらったのは通常のゴーストではなく、より高性能になりダークな意匠が特徴的なブラックバッジゴーストだ。それに関する詳細な説明はプロに任せよう。
乗り出しで5000万円にもなってくる車。
車両からにじみ出るオーラは半端ない。横幅2mで長さが5m54cmもある。
全体を見て華美なところが無いのはまさに、最新のロールスロイスが標榜するところだが、例えばボディパーツの隙間を見ても見事な仕上がりになっている。
写真で見ると伝わらないけれど、実際目の前で見ると本当に大きい。
シンプルだが、車のサイズが尋常ではなく大きいので存在感大。
パネルの隙間もこれ以上ないくらい詰まっている。
インテリア。
ブラックバッジなので全体的にダークカラーで統一。金属パーツもダークカラーに変更してあるのだそう。ハンドルは今どきの車に比べてかなり細い。
シートは柔らかめ。そして座面が大きい。
ドアのレバー等は金属。
安物のメッキ調なんかには出せない本物の金属の質感がある。
触ると冷たい。
サイドシル。
ゴーストのバッジ。
リアシートの座面は広く柔らかい座り心地。
左右のゆとりもあり広々している。
市街地試乗
試乗する前に誓約書を書く。
ぶつけたり、事故を起こしたら弁償しますの誓約書だ。
躊躇いなくサインして長さ約550cm&横幅200cmの左ハンドルゴーストを運転させてもらう。
エンジンをかけると先ほど外で聴いた時は大きな音に感じたサウンドも、室内では遠くの方で僅かに聞こえる程度。
驚くほど軽くて細いハンドルを回して市街地に繰り出す。
発進して数秒でわかった。
この車は本当にすごい。
よく魔法の絨毯のような乗り心地と言われるロールスロイスの乗り味。
昔からロールスロイスは魔法の絨毯のような乗り心地と言われている。
残念ながら自分は魔法の絨毯に乗った経験が無いし、仮に魔法の絨毯でなく筋斗雲があったとしても、絶対に貫通して地面にめり込むので他の自動車評論家のように、空に浮く乗り物と比べる事は出来ない。
しかし、ちゃんと路面のショックは小さいながらも伝わってくるので魔法の絨毯は言い過ぎだろう。
ただし、滑るように走る。
なんか水の上を走っているような浮遊感というか、滑らかさがあり、これは過去に乗った事がないレベル。Q8も初めて乗った時は船に乗っているように滑らかに動くなと思ったが、ゴーストはより顕著だ。
分析して見てみると発進時の動き出しが滑らかかつ軽い、そして低速からのシフトアップが気づかない程滑らか。発進時に高めのV12エンジンサウンドが遠くから響いてくる。
ハンドルが軽く、切った分だけ滑らかに曲がり、室内に響く風切音やロードノイズは無し。
これらが全部合わさって道路というより、水の上を滑らかに移動しているかのような気持ちにさせる。
これは後席は勿論最高だと思うけれど、是非とも運転したいと思える車。
運転することに全く負担がなく、視界も広いので我慢するところがない。
走りに特化したスーパーカーの走りはある面では快適だがある面では過酷だ。姿勢や視界の悪さ、騒音の大きさ等我慢するところも多い。
この車は我慢することが何もないので本当に楽。
トルクも900Nmあるので発進時にもたつくようなことはない。
かといって、アクセルを離すと背中をけ飛ばされるように”ドン!!”と走り出すことも無い。全てが滑らか。
とにかく乗員の全てにストレスをかけない車作りが貫かれている。
運転が楽しい。
信号待ち中の一コマ。
ボンネットの先にあるマスコットに感動。
跳ね馬のロゴが入ったハンドルの車を運転した時くらい感動する。
そして車の性能には関係ないが、この車すごく見られる。
マフラーにより消音されているので、外を走っていれば無音だと思うのだが信号待ちだったり右折待ちをしていると、すれ違っていく対向車や歩道沿いにカメラを構えている人、見ている人が多く視界に入る。
爆音の車や派手なスポーツカーで衆目を集めるのは簡単だが、無音のセダンで注目を集めるのは流石世界最高の車と言われるロールスロイス。
車内にいる自分もロールスロイスの世界観に感動しっぱなしだが、外向きにも自動車のオーラを放っているのは間違いない。
まとめ
帰りに乗り込んだ自分のQ8。
ゴーストの後に乗ると室内が騒騒しく感じた。
ロードノイズがとても大きいと思った。
ボディ形状による差も勿論あるが、それにしても車内が揺れると思った。
すごくこう、安価な車に乗っているような気持ちになった。
それほどまでにあらゆる快適性能が究極のレベルだったロールスロイスゴースト。
手に触れる素材も全てが本物。
走りも本物。
走る図書館のような存在だ。
これこそまさに究極の車といって間違いないと思う。
”フロントグリルの中まで光らなくていいよ”くらいしか言う事がない、今まで乗った中で一番の快適な最高の車だった。