期待が大きすぎたのかもしれない。
ベントレーは憧れの大好きなブランドだ。
だから期待し過ぎてしまったのかもしれない。結論から言うと自分には購入対象にならない車だった。普段乗っているアウディのQ8との比較もしつつ試乗させてもらった感想を述べる。
Q8より1000万円高い納得できる要素があるのかどうか
自分が普段足車に乗っているアウディのQ8luxuryは本体価格が1182万円だ。
Q8のカタログによるとラグジュアリーパッケージは
・全ての座席を快適な温度に整える4ゾーンオートマチックエアコンディショナー
・イオンを発生させて室内の有害物質や細菌を低減させるエアクオリティパッケージ
・ボルテラレザーのコンフォートシート
・シートヒーター&シートベンチレーション&マッサージ機能
・室内に17個のスピーカーが設置されるバング&オルフセン3Dサウンドシステム
・荷物を積むときには車高が下がる
・360度全方位車外監視カメラ
等によりアウディの考える上質さを具現化し、快適性を究めたQ8だと説明されている。
実際車内の静粛性や揺れの少なさは相当なもの。
自分の人生において、快適性は過去に乗ってきた車の中でぶっちぎり一番だった。だから気に入って購入したのだが、同じワーゲングループに属するベンテイガにそのQ8もかなわない程の納得できる何かがあるのか、と言うのが一番知りたいところだった。
実際にはQ8は走行中、路面によってはロードノイズが聞こえてくるくらいでエンジン音はほとんど無音。耳をすませば遠くから聞こえてくるレベル。
これより快適で静かな車なんて作れるの??
という素朴な疑問もあった。
それに何よりベントレーは昔から大好きなブランドのひとつだ。色々影響を受けている。
だから、そのベントレーをいよいよ検討できる段階まで来れたことを嬉しく思い、ショールームにやってきたのだ。
ベントレー ベンテイガ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5125×1995×1755mm
ホイールベース:2995mm
車重:2440-2530kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:550PS(404kW)/5750-6000rpm
最大トルク:770N・m(78.6kgf・m)/2000-4000rpm
タイヤ:(前)285/40ZR22 110Y/(後)285/40ZR22 110Y
本体価格2280万円
ベンテイガには本物の素材が使われていない事を知る
本体価格は何もつけずに2280万円なので、ここに自由にオプションを盛って行けば3000万円はあっという間に超えるだろう。
しかし、試乗する前にいきなり強烈に幻滅してしまう事実を知った。
上記の写真にもあるベントレーを象徴するようなフロントのメッキグリル。
本物の金属だと思っていたのだが、なんと全てメッキ加飾のプラスチック。
触ってみても押すと『ミシ、、、』というしなるプラスチック素材で出来ており、膝カックンを受けたくらいガッカリした。
そして車内も見てみるとさらにガッカリは続く。
インテリアの木材は美しいので文句ないが、操作パネルの黒いプラスチックスイッチの安っぽい事。
そして多くの高級車は今やドリンクホルダーを使わないときはカバーで覆って隠すことが出来る。格納できる。そうしたカバーはついておらず、むき出しの何とも旧世代的な型落ち感をすごく感じるセンターコンソール。
昔のアウディのギアレバーそのままな感じがある。
エアコンの吹き出し口や操作パネル、スイッチの周囲は光り輝くメッキがされているが、これも残念ながら金属ではない。
時計の下についている二本の釘のようなものは、押し引きする事で風を止めることが出来る。
が、これもプラスチックのメッキ加飾だ。
触った感じが軽く安っぽい。
銀色のメッキの部分は以前は本物の金属が使われていたそうだ。
今は全てプラスチックのメッキ加飾だ。
悲しい。
ギアレバーもエアコンの操作ノブも銀色の部分は金属は使われていない。全てメッキ加飾。2022年モデルとは思えないギアレバー周辺。
敢えてアナログにしたにしてもセンスが、、、。
ハンドルはアウディそのもの。
左と右の上下に動かせるローラータイプのつまみがメッキ加飾になっているだけだ。
ベントレーと聞いて、3000万円級の車と聞いて、この明るいカラーのインテリアを見れば超高級車に見える。
でも、室内の色が全て黒だったとして、ウッドパネルも使われていなかったら型落ちのQ7や型落ちのカイエンにしか見えない。
荷室を広く取ってあるベンテイガ、
Q8よりも荷室は奥行きが長い。
だから当然だが、後席の足元はQ8よりも狭い。
ベンテイガの購買層は後席の広さよりも荷室の広さを重要視するのだろうか。
ベンテイガのスピーカーの音質チェック
20分間街中を試乗させてもらった。
その前にサウンドチェック。
自分で購入して使う場合、スピーカーの音質は最重要項目の1つだ。
スピーカーについて訊いてみると、ベンテイガにはスピーカーは3種類あるのだそうでこの試乗車についているのは真ん中のグレード。
基本的に一番下でも相当良いスピーカーが搭載されているので、音質はかなり良いと営業さんの太鼓判。
ちなみに自分の普段のオーディオ環境だが、Q8はバング&オルフセンの3Dサウンドシステムだ。
自宅リビングやガレージ、寝室や書斎等の普段過ごす部屋はBeosound2などのバング&オルフセンのスピーカーで統一してある。
旅行時に使うヘッドホンもバング&オルフセンのH9iだ。
その環境下で慣れている自分が聞いたところ、ベンテイガの真ん中のグレードのスピーカー音質は非常に悪い。
安価なBOSEのようにやたら低音だけが強調され、高域が潰れてしまっている。
音の分離も悪い。
全然ダメ!使えない。
市街地走行
エンジンをかけて走り出す。
始動するとV8ツインターボのエンジン音が車内には控えめに届く。
外は結構騒々しい。
走行モードは自慢のオートモードに設定。
走行中に使うウィンカーの操作音は完全にアウディと同じだ。
ウィンカーのタッチもアウディ。
目線もQ8と同じ。だから初めて乗る車なのに全然緊張感が無く、むしろ昔から慣れ親しんだ車のような感覚だ。
エンジンパワーに関しては街乗りレベルなので十分すぎるとしか言いようがない。
2.5tもある車体を1.5t位のコンパクトカーのように軽々動かす。
ちなみに街中を走行している限り、静粛性はQ8と同程度かQ8の方がやや上。
路面からの情報もタイヤがQ8より大きい分、僅かだがこちらの方がハッキリ車内に伝わる。
大きさも感じさせずとても運転しやすい車だけど、自分が求めるラグジュアリーさにおいてはQ8に軍配が上がるところが多かった。
リアのウィンカーも外周をなぞるように流れるのだが、流れ方があまりキレイではない。
ベントレーに対して長年の大きな憧れがあったため、今回乗ってみて肩透かしを食らったような感覚になってしまった。
自分が憧れていたベントレーの今と昔
上の写真のコンチネンタルGTもフロントグリルは金属ではない。
営業さんも『昔はベントレーは金属を使っていたのですけどね、、、』と話していた。
今回、1182万円のQ8luxuryと2280万円のベンテイガを比べた感想だ。
Q8luxuryに比べてベンテイガは
・室内はQ8luxuryよりも静粛性が低く
・路面からの突き上げも大きく
・後席の足元は狭く
・スピーカーの音質も悪い
という評価になってしまった。
後席に乗っていた妻にも自分の感想を言う前に、どうだったか聞いてみた。
『天井は高くて広々してた!』
という感想のみで、静粛性とかパワーとかは後席に乗っている限りQ8と違いが分からなかったと言っていた。
Q8購入時にアウディの営業担当が言っていた事を思い出した。
『ワーゲングループの研修会とかでグループメーカーの車にも乗るけれど、ベンテイガよりもQ8の方が快適です。ウッドパネルなどの余計なものを使っているので車内のノイズが増えるんですよ。』
Q8を売りたいから自分にそういうのだろうと聞いていたけれど本当だった。
ずっと昔、車の雑誌でベントレーのインタビューを見たんだ。
内容は
『ベントレーのもっとも力を入れているところはインテリアです。気になるところを触ってみてください。レザーに見える所にはレザーを、金属に見える所には金属を、木に見える所には本物の木を使っています。本物を知る人のために満足してもらえるように、、、』
当時の自分はこの言葉に感銘を受け、いつかはベントレーと思っていた。
自分の家を建てる時もベントレーの影響を受けていたので、極力本物の素材を使う事にこだわった。
床も木だし壁も漆喰、カーテンレールには真鍮を使っている。1枚板に見える所は1枚板を使った。
でも憧れたベントレーの今は、フォルクスワーゲンの倉庫に余っている部品で作られている車のように見えてしまった。
ただただ悲しい。
本当に大好きなベントレー。
ベンテイガには本物が醸し出すオーラがなかったのが今回一番がっかりした事なんだ。