老舗の矜持。
特にこうしたコロナによる不況下ではなおさらそうだ。
企業として存在している限り、売り上げを上げて利益を確保する必要がある。
そんな状況においても自分自身の、ブランドの信念を維持するという事は本当に大変な事である。
低価格ブランドのイメージからの脱却はほぼ不可能
一般的に不況下において特に高級品を販売している会社は、利益を出すことが難しくなるのは容易に想像できる。その際の簡単な解決方法としてあるのが、商品を値下げして売る事である。こうすることで高価格であった商品がこの時期なら安く買える、と多くの人が購入するかもしれない。
しかし、この行動は同時に危険な問題もはらんでいる。
良く行く軽井沢のショッピングプラザにも多くのアウトレット店が存在する。そこでは数々のブランドが『定価の〇%引き』という販売手法を取っている。
勿論、欲しい物がリーズナブルに購入出来て、なおかつ売れ残りだった商品を廃棄しなくてすむ、消費者と企業のWinWinの関係でもある。
しかし、こうなるとそのブランド商品を定価で買う人は間違いなく減るだろう。
定価で買っても数年後にはアウトレットで半額で並ぶかもしれない。
定価で買ったのに『アウトレットで同じの売ってるよ』と言われるかもしれない。
そうすることで、今まで定価で買ってくれていた企業にとっての”いいお客さん”を自ら遠ざける事にもなってしまう。
多くのブランドの目指すところは”値引きの無い定価販売”である。
旧モデルであれ、不人気商品であれ、定価よりも安値で売買されることは、こうした目標を自ら壊していくことになってしまう。
これが、ハイブランドである場合は特に大きな問題だ。
マツダの場合
ここ数年でマツダは今までの負のスパイラルから脱却しようとし、自動車販売を高級化路線へ導こうとしている。自動車自体の値段は高いわけではないのだが、売り方をとにかく値引き販売から変えてきている。
実際にマツダの車は良い。
CX-5は国産車の中ではNo1クオリティである。間違いない。
しかし、やはり過去についてしまった故障や値落ちのイメージからなかなか脱却できず、今も奮闘している。
一度落ちてしまったイメージを回復させるのは至難の業である。
応援したい国産車メーカーなので何とかこれからも頑張って欲しい。
客に媚びない老舗の魅力
高級腕時計ブランドではヴァシュロンコンスタンタンが一番好きだ。
全体的に控えめだが上品な美しさを持っている。そんなところに大人の魅力を感じる。
ヴァシュロンコンスタンタンは数年前に”フィフティーシックス”という新しいモデルを発表した。
その時の話にこんな話がでていた。
ヴァシュロンコンスタンタンの時計作りへのこだわり
卓越した技術、エレガントで洗練されたデザイン、そしてオーセンティックであり、控えめで主張しすぎないこと。それこそが現在まで引き継がれているブランドのスタイルであり、アイデンティティなのです。
フィフティーシックスは、リラックスした時間やカジュアルなスタイルでも着けられる時計がほしいという顧客の声に応えるために生まれたモデルです。私たちは、アーカイブを参考にしながら、最新の技術やライフスタイルを取り入れて、新しい時計を作り上げました。この時計によってヴァシュロン・コンスタンタンを知った方も多いでしょう。
でもそれは重要なことではありません。
私たちは、これまでもこれからもエクスクルーシブなブランド。自分たちのスタイルを変えてまで、客層を広げたいとは思いません。時計の価値を分かる人たちだけの、知る人ぞ知るブランドでいいと思っています。
スタイル・アンド・ヘリテージディレクター クリスチャン・セルモニ氏
「知る人ぞ知る存在のままでいい」──スタイル・アンド・ヘリテージディレクターが語る世界最古ブランドの過去と未来
自分たちのスタイルを変えてまで客層を広げたいとは思っていない。
これがどれだけ大変なことか。
こうしたゆるぎない哲学があるからこそ、世界三大時計の地位を確固たるものにしているのだろうと思う。
ホントに素晴らしいし、自分も取り入れておきたいと思うのである。