4ドアのスポーツカーの呼び名に偽りなし。
アウディのRSモデル、BMWのMモデル、そしてメルセデスベンツのAMG。
それぞれのメーカーの威信をかけたハイパワーブランドの名が冠されると、乗り手の気持ちも昂るというもの。
今回はAMG C43に乗ってみる。
羊の皮をかぶった狼の魅力
今よりも、もっと若い頃はこの手の車の魅力が全然わからなかった。
見た目は普通の車だけど、走るとスポーツカーも真っ青な走り、という車だがお値段も相応に高く、本物のスポーツカーも充分に買える値段であることが多い。
そうしたとき、敢えてクーペよりもかっこよくない方のスポーツカーを選ぶ理由なんてないのではないかと思っていた。
しかし今では少し大人になり、ひけらかさない速さやカッコよさもわかるようになってきた。きっと、この手の車は大人の車なのである。
自分自身が大人になったことによって、速そうに見えないけど実は速い車の魅力にも気づいたのである。
全長×全幅×全高=4700×1810×1410mm
ホイールベース=2840mm
車両重量=1720kg
エンジン=V6DOHCツインターボ
排気量=2996cc
最高出力=390ps/6100rpm
最大トルク=520Nm/2500-5000rpm
トランスミッション=9速AT
駆動方式=4WD
車両価格=950万円
20年前のフェラーリ360モデナはV8 3600ccで400psだった。
それが現代では約400psのV6ターボのベンツが半額の950万円で購入できるのである。
自動車の進化である。
トランスミッションも9ATで、最高でも6速までしかなかった当時よりもはるかに多段化している。
エクステリアはシンプルなデザインで派手ではない見た目に好感が持てる。興味ない人からすればただのベンツのセダンだ。
インテリアもスポーツカー濃度は低い見た目で、ラグジュアリーな内装である。
街中走行
エンジンをかけると遠くの方で元気のいい音が聞こえるな、程度で車内の静粛性は高い。もしかしたら暖気してあったせいかもしれないが。
駐車場を出て少し動かしただけだが、ものすごく違和感を感じたことがある。
それはハンドリング。
ものすごく不自然に電子制御が効き、明らかに人工的に重くなったり軽くなったりして運転していて不快。
走行モードも一定にしていて極低速で走ってただけなのだが、相当に気持ち悪いハンドリングだった。
30~40km/h以上のスピードを出すと気にならなくなったが。
普通にドライブモードで流している限りは至って快適な車。
サスの突き上げも多少はあるが、支障をきたす様な硬さではない。
この上には63も控えているので、これがCクラスのMAXのスポーツレベルではないが、快適性は全く損なわれていない。
加速チェック
開けた直線でスポーツモード+に変更しマニュアルモードで加速力をチェックした。
トルコンATだと思われるが、シフトチェンジは速く滑らか。
最近はトルコンATでも相当シフトチェンジが速くなった。BMWもアウディもベンツもさすがである。
だから、DCTが不要になったかといえばそんなことはない。
トルコンATはダイレクト感に欠ける。
滑らか過ぎるのだ。高回転まで引っ張ってパドルを引くと
『ぬわん!』
とタコメーターの針が即座に落ちる。
それに対してDCTは
『カツン!』
とはっきりした感触を残してギアが変わるのである。
実際にはショックはないのだが、パドルをひいた感触としてはここは結構違う。
よって俺はトルコンATのよりもDCTのフィーリングの方が好きである。
しかし、このC43は一瞬でギアが切り替わり、強めの加速Gを伴いながらグイグイと加速していく。必要十分なパワーやや上、なパワー感だ。
速い。
43のエンジンでこの走りなら63はどれだけの加速をするのかとワクワクする。
総評
アクセルを踏み込めば6気筒の整ったサウンドを伴って十分に速く加速する。
ワインディングなんか走っても間違いなく楽しいだろう。
それほどのパワーを秘めつつも、街中を家族を乗せて移動するにも問題はない快適性も併せ持っている。
43エンジンはAMG製ではなく、メルセデス製のAMGチューンと聞いた。
あまり期待していなかったのだが、予想以上の走りに驚いた。
BMWのM未満のMパフォーマンスエンジンを買うくらいなら、車種によってはAMGのこのエンジンの方が楽しいと思う。