素晴らしい車。
現在のスポーツカーやスーパーカーはある意味、自動車として完成の域に達している。
20年前は『日常的に使うことができるスーパーカー』などという触れ込みでフェラーリの360モデナやランボルギーニのガヤルドが出始めてきた。
しかし、今や当時とは比べ物にならない出力まで上がっても、御幣を恐れずに言えば、すべてのスーパースポーツカーを通勤や買い物に使うことができるほど、使いやすくなっている。
M5などは昔からある車だが、一見すると妙な車だ。
セダンで日常的にも使える便利さをもちつつも、スーパーカーを追い抜くほどの加速力を持っている。車に興味ない人から見ればただのセダンだ。好きな人から見れば違うのだが。
約2000万円もの対価を払うのであれば、いっそ見た目からスポーツカー然とした車を買うことができるのに、あえてこの車を選ぶというところに『通』を感じる。
しかし、実際ニュルブルクリンクでのサーキットタクシーでも使われているのだから、その性能は折り紙付きだ。
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4966×1903×1469mm
ホイールベース:2982mm
車重:1865kg
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:625ps(460kW)/6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-5800rpm
タイヤ:(前)275/35ZR20 102Y XL/(後)285/35ZR20 104Y XL
燃費:約9.3km/リッター、NEDC複合モード
価格:1858万円
BMW M5はコンペティションになり、最高出力は625馬力まで高められた。
もはやハイスペック過ぎて常人や、俺のような凡人以下の人には使いこなせないパワーである。しかし、賢い電子制御があるおかげで、我々でも楽しんで乗ることができる。
リアのテールライトはダサい。
写真で見て初めて気が付いたが、リアウィングがついていた。現車見たときはボディと一体化して見えて、気づかなかった。
最近付いた赤いM1、M2ボタン。緊急用の赤いボタンを連想させ、危険な雰囲気。メーターはデジタル。
ハンドルにはMカラーのステッチが入る。
高品質なインテリア。そしてどこを見てもBMWらしさ満点。
だいぶ落とされた車高。標準でこの低さみたい。
市街地走行
エンジンをかける。
窓を開けてエンジンをかけると
『バフォーン』
と気合の咆哮が響き渡る。BMWのMシリーズは比較的どの車も始動時に雄たけびをあげるが、これが車好きには大変効果的。
俺はこの始動音だけでBMW M5コンペティションに惚れてしまった。
始動から数10秒は元気なアイドリング音が続くが、少し経つと静かになる。一気にエンジンルーム内を温めるわけだ。
その後窓を閉めて街中へ出る。
あの車高の低さからは信じられないほど快適だ。ほとんどショックはなく、車内も驚くほど静か。例によって試乗はコンフォートモードのみになるが、車の実力の片鱗は十二分に感じられる。
この快適さは、例えば車に興味がない親兄弟なんかを乗せて、街中を法定速度で走ればこの車が625馬力のハイパワーエンジンを積んだ車だなんて100%気づかないと思う。
その位、街中走行も快適なのだ。
高速走行
高速道路に上り、少し混雑した首都高を走らせる。
ハンドリングはコンフォートモードでも割とクイック寄り。右へ、左へとひらりひらり。左右に動くときは少ない入力で十分。
それに車体の安定感。これが素晴らしい。
他の車だったら確実に減速してから入るようなコーナースピードで曲がっても、ロールもないし車体がピタリと安定している。流石!あれだけの速度でニュルブルクリンクを走り回れるポテンシャルを持っているのだから、こんなタウンスピードなんか問題になるわけないか。
路面の継ぎ目はコツコツと拾うが、全く問題ない許容範囲内。
クルクルと向きを変えるし、ブレーキもガッツリ効くので運転していて楽しい。
加速チェック
前が開けたのでパドルを使い、低いギアからの加速を試してみた。
3速まで下げて加速を試してみたが、これがもう素晴らしい。上り坂での加速だったが、下りで走っているかのように猛然と加速し、車体はピタリと安定している。
すごいなこれ!
そしてサウンドも良い。スポーツモードであれば尚更良いサウンドを聴くことができるだろう。
次は平地で同様に加速チェックを試みた。
3速3000回転くらいからの加速だが、アクセルを踏む力を強めると車体がグッと沈み込み、加速度的に速度が上がっていく。これは速い。
その時のダイレクトなDCTの変速も良いし、外から聞こえてくるサウンドも魅力的だ。
総評
スタイリングは普通のセダンタイプなので、例えば8シリーズのように『おお!かっこいい!!』というわけではない。
しかし、好きな人から見れば後ろから来たら即、道を譲らなくてはならないマシン。
見た目がどうとか、テールライトのデザインが好きではないとか好き勝手言うものの、俺はこの車に乗っている人が羨ましくて仕方がない。