BMWが手掛ける大人のGTカー。
デビューした時からここ最近で一番カッコいいBMWだと思っていたが、実車を見てみるとやはり同じ気持ち。俺は2ドアのスポーツカーが大好きなのだが、この車もまさに2ドアのカッコいい車のお手本のような形をしている。
530馬力という出力は相当なものだが、飛ばさずに走るのが似合う車でもある。
BMWはドイツ御三家の中で一番感情や感覚に訴えかける走りをする車作りをする、と個人的には思っている。アウディは速いが感情の変化がない感じだ。AMGは音が低くて音程の変化が少ない。
それに対してBMWのハイパワーモデルはエンジンをかけた時の大きな始動音や、高回転時の美しいサウンド等、速さを五感に訴えかけてくるのである。
駆け抜ける喜びのキャッチフレーズに嘘はない。
BMW M850i xDriveクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4855×1900×1345mm
ホイールベース:2820mm
車重:1990kg
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:530ps(390kW)/5500rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-4600rpm
タイヤ:(前)245/35R20 95Y/(後)275/30R20 97Y
燃費:9.9km/リッター(JC08モード)/8.3km/リッター(WLTCモード)
価格:1714万円
大きな車体でフロントが長く、車体後部が絞られている。
素直にカッコいいと思う。BMWのデザインはどこか今一つなデザインの車が多いと個人的に思うのだが、i8に続いてこれは久しぶりに素敵なデザインだ。良い。
最近の細くなったテールライトも良い。
高級感ばっちり!実際高いが。
車体後部が傾斜しているのが良くわかる。
車内のフロント2座は非常にゆったり座れる。
ただ、ボンネットが長い割にあまりボンネットが見えないので、前がどこまであるのか分かりづらく、慣れるまでは少し気を使う。ハンドルは太くて握りやすい。
レザーの香りも良い。ペダルはオルガン式。
市街地走行
エンジンをかけて街中へ繰り出す。
車内の静粛性は高く、前後20インチの大きいタイヤを履いていてもしっかりロードノイズは抑えられている。
ちなみに850iはコンフォートモードで試乗することが条件であるため、スポーツモードは試していない。
街中での走行は非常に快適。
コンフォートモードなのでアクセルレスポンスも穏やかで、ブレーキも初期制動は控えめ。踏んでいくほどに効いてくるタイプなので、乗員が前後に振られないよう配慮してあるのかな、と思った。
路面の段差はコツコツ伝えつつも、ほんとに静かで快適な車内。
高速走行
高速道路へ上る。
高速上でも快適な乗り心地は一切変わらず、GTカーらしい走り。
車体が大きい事もあるし、なんかこう、飛ばしたいような気持ちにならない。
車内がとても静かなので、この静寂を乱してはいけないような気がするのだ。
好きな音楽を流しながら、助手席の人と楽しくお話し、ゆっくり高速を流すのが似合う車。
路面の継ぎ目は『コツコツ』と伝えてくる。
加速チェック
直線で低いギアから加速を試してみた。
トルコンATだが、シフトチェンジはとても速く、変速の音だけ聞いているとDCTのようだ。コンフォートモードでの加速チェックなので、M850iの本領発揮していない速さだが、ハンドリング、アクセル、ブレーキ、どの操作もクイックではないし比較的穏やかに加速する。
530馬力のV8ツインターボが遅い訳ないので、コンフォートはマジで快適に徹したアクセルワークができるよう設定してあるのだと思った。
勿論、高回転まで回すと遠くの方でV8の勇ましい音が聞こえてくる。
しかし、車内が静かであるためMモデルのように叫ぶような感じでは響いてこない。
総評
大人のラグジュアリーなGTカー。
爆音をまき散らして走るのはMモデルがある。
このモデルはそれらとは違う、ハイパワーを誇示せず使う大人の使い方が似合うと思う。
子会社であるロールスロイスのレイスのように。
アクセルを底まで踏みつけ、シフトチェンジを繰り返し、強力なブレーキングをするような汗臭い使い方ではない。
唸って走るのではない、どんな状況でも静かに走るために使うV8ツインターボエンジンなのだと思った。
勿論、その気になれば過激な走りだってお手の物だろう。
しかし、この車は大人の車だ。
530馬力の表面を使って滑らかに走るのである。
俺はこの贅沢な車はとても好きだ。