毒は後からジワジワ効いてくる。
フィアット500がアバルトの手によりチューンナップされた595。パワーアップされたエンジンや足回り、ゴツくなったエアロが特徴。可愛いけれど走りを予感させる風貌は決して期待を裏切らず、乗り手の体を徐々にサソリの毒におかしていく。
アバルトの車両、スペックだけ見てあまり興味が持てなかったので今まで食指が動くことがなかった。しかし、今回この595に乗って今まで人生を損していたことがわかった。チューンナップされたといってもたかだか145ps。大したことはないだろう、そう思っていたのだが、見事に良い方に裏切られた。
やはりイタリアの工業製品はバッグも靴も車も、人の心を掴むことが上手い。
ABARTH 595 MT
全長:3,660(mm)
全幅:1,625(mm)
全高:1,505(mm)
車両重量:1,110kg
乗車定員:4名
エンジン種類
直列4気筒
DOHC 16バルブ インタークーラー付ターボ
総排気量:1,368cc
ボア×ストローク(mm):72.0 x 84.0
圧縮比:9.0
最高出力
〈kW(ps) / rpm〉 [EEC]
107(145)/5,500
最大トルク
〈Nm(kgm)/rpm〉 [EEC]
180(18.4)/2,000
SPORTスイッチ使用時 210(21.4)/3,000
燃料タンク容量(ℓ):35
トランスミッション:5速マニュアル
300万円
見た目はフィアットの500だが、前後のエアロはスポーティなスタイルに換装されている。好きな人が見れば、遠くからでも普通の500ではないことは分かるだろう。
ただし、ベースの500自体がとても小さくかわいい車なので,エアロが変わっても全体の雰囲気は可愛い。
左ハンドルのマニュアル。
非常に運転しやすく、この手の輸入車に乗るのであれば本国仕様の左ハンドルのマニュアルがベストだろう。クラッチの踏力は軽く、ギアの操作感もまずまず。ソフトなタッチ。
エアコン等の操作パネルは安い国産軽自動車と同等の物がついている。ここは走りに振っているため、、、と割り切る。まぁ、フィアット500もハイテクな要素は皆無な車だが。
街中走行
エンジンをかける。
遠くの方で少しだけ元気な音が聞こえたかな、、、というレベルで、特段エンジンサウンドの演出はなし。オプションのマフラーを装着すればもっと元気になるはず。
街中走行した感想だが、めっちゃ運転しやすい。
驚き!
クラッチも神経質なところがなく、半クラの場所もわかりやすい。
結構ズボラに運転しても平気。これがスバルのBRZや、124スパイダーのMTになると発進時はもう少し気を遣う。
サスも優しく、拍子抜けするほどおとなしく走れる。
ブレーキのタッチも良いし、どうしちゃったのこの車?!ってくらい走りに関して優等生なのだ。
マニュアルのギアレバーの操作感はモコモコって感じ。
柔らかくてソフトなフィーリングで、しっかりギアがかみ合った!!っていうフィーリングはないアバウトなもの。だけど、意外と運転しやすい。
加速チェック
さて加速チェックをする前に、この車にはスポーツモードボタンがある。
このボタンの効果はしっかり体感でき、例えば走行中に『ポチッ』と押すと同じアクセル開度でも車がグッと前に出る。アクセルに対する反応が良くなり、スポーティーな走りができるのである。個人的には常時オンでも良い。
その状態で、開けた道でアクセル全開を試してみた。
回転上昇は鈍いが、排気音に比例してグングンとスピードが伸びる。
心地よい加速感だ。
運転していて疲れるような要素がなく、どこまででもリラックスして走っていけそうな運転しやすさがある。
総評
595のサソリの毒は弱い。
しかし、時間をかけて後から効いてくる。
積載性だったり安全性だったり、、、そんなことは全然お話にならない。でも、運転していてこんなに楽な車はない。ほんとに気持ちよく車を走らせる事ができ、このままもっと遠くへ行きたいと思う。
普段乗っているのはアウディA3でオートマだが、運転していて楽しいわけではないので長距離を走ることは苦手だ。運転していて退屈なのだ。それに対してこの車は、サイズ感もパワー感も操作性も、すべてが手足の延長のように動く。
モビルスーツに乗っているような感じかもしれない。
今もこうしてブログを書きながら、595の運転フィーリングが忘れられずにいるのだ。
こんなに素晴らしい毒ならば、もっと早く冒されておくべきだったと思っている。